今でも現役のハイスペックワゴン
S124と言えば、ネオクラシックの代表格でもありますし、同じくネオクラのワゴンではボルボ240と双璧をなす存在だと思います。
令和の今でも東京都内では文字通り毎日見るくらいたくさんの124が走っています。今回はそんなS124の前期300TEなのですが、オーナーさんの手によって日本国内には未導入のスポーツラインのパーツを組み込んだ仕様。様々なアップデートもまた見どころです。
S124 300TEのデザイン
前期型の特徴は2つ。ヘッドライトのグリル側が角ばっているのと、エンブレムがグリルに装着されているという点です。標準状態であれば、おそらく前期型はオレンジのウィンカーライトカバー、後期はクリアになっているはずです。

ボディカラーはエゲートグリーン。ソリッドな緑色です。エゲート(Agate)はめのうのことです。この個体は1990年式で、この年からサッコプレートが採用されます。

サイドのフォルムは定番のワゴンといった出立ちで、バランスが取れていると思います。ワゴンはEセグメントが最もマッチしていると思います。Cクラスや3シリーズのワゴンは大型化があまりされていない2010年代くらいまでは少し無理やり感がありますが、古くても124くらいのサイズがあればカッコ良いです。

テールライトは小さく、空力のためにボディラインに沿って凹凸が付けられています。リアウィンドウは特にサイズが大きく、トランクの半分ほどの面積を占めています。

すでに気づいている人もいると思いますが、このホイールは普通ではありません。スポーツライン用の鍛造ホイール。190Eエボにも使われているものですがサイズが違うとか。

このエンブレムがスポーツラインの証です。厳密にはこの個体はスポーツライン仕様ではありますが、シート以外の機能的パーツは全て変更されているのでホンモノの仕様。スポーツラインはステアリング、ステアリングラック(クイックに)、スタビリンク、サスペンション、ホイール、シート、シフトノブなどが変わります。しかもサスペンションに関しては、搭載されるエンジンとボディによってそれぞれセッティングが違うので恐ろしい数のパターンが用意されていることになります。

前期だと300TE(SOHC)、後期だとE320(DOHC)になります。この6気筒のモデルは7人乗り(3列目が後ろ向き)で、220や280では5人乗り。ちなみに300-24というツインカムの3Lも存在します。
S124 300TEの内装
スポーツライン用の小径ステアリングはややコンケーブした形状になっています。シートは元々のファブリックシートのままです。

シフトノブも標準とは少し形状が異なります。

リペアされたウッドパネルは非常に美しく仕上がっています。

ドアパネルの内張もシートと同じファブリックが貼られています。

メーターもよくあるカビを除去して綺麗な状態です。愛を感じますね。走行距離はもうすぐ20万キロといったところです。

S124の特徴でもある広々としたトランク。実はダンパーが隠れているので開口部がギリギリまで使えるようになっています。

ワゴンはセダンの延長ではなくワゴンとして作られているということでしょう。

3Lの直6で馬力は185馬力ほどです。後期は一気にパワフルになりますが、前期はかなり控えめで味があります。
試乗インプレッション
まず感じるのはそれぞれの操作の重みです。アクセルはしっかりと踏み込まなければ発進しませんし、ウィンカーも力強い操作が求められます。決して指先だけで運転するのではなく、身体全体を使って操縦するというのが124らしいところです。

スポーツラインの足回りが入っていても乗り心地は柔らかく、心地良いです。タイヤの肉厚をしっかり使って段差を処理し、コーナーでも粘ります。クイックになったステアリングの効果は絶大で、少し速くステアリング操作をする時にキレの良い挙動を示します。

奇しくも普通のS124を乗ったことがないので比較は難しいですが、全体的なイメージはハンドリングマシンといった感じです。

エンジン音は後期320よりもメカノイズが多くて味があります。車重が重めなので決して速くはないのですが、遅いと感じることもありません。100km/hでの回転数は3000rpmくらいなのでギア比は低め。スムーズな直6のおかげで不快感はありません。

こんな2台(右はE320T3.6AMG)が並ぶことはありませんね。エンジンのAMG、コーナリングのスポーツライン。素晴らしい体験でした。