試乗記

フェラーリF355試乗インプレ|優れた自動車では無いのに虜になる

V8人気の火付け役

フェラーリは元来V12をメインとして、V8モデルはサブ的な立ち位置でした。しかし現在はV8フェラーリが主流になりつつあります。そんな時代を作った立役者がF355だと思うのです。今でも人気の高いフェラーリF355は中古相場ではF1マチックで1500万円超え、マニュアルになると2000万円でも買えない時代になってしまいました。

今回はそんなフェラーリF355の中期マニュアル個体を試乗インプレッションします。

フェラーリF355のデザイン

V8モデルとしては最後のリトラクタブルヘッドライトを採用したモデルになります。運転席から見ると実はそこまでせり出ていないのは驚きました。

ボディサイドにはエアインテークが2つ。フロントグリルは完全に閉じられていて、冷却はサイドだけです。リアはチャレンジグリルに変更されています。これによってかなりの放熱効果がありそうで、リアの跳ね馬はかなり熱くなっていました。

マフラーはメーカー不明ですが可変バルブがついています。

ここにも穴が開けてあります。

ピニンファリーナがデザインしたF355の中でもこのテールは非常に印象的です。308から続くピラーは最も伸びやかで美しいです。エンジンフードはこれまた放熱の穴が大量に開けられており、しかも非常に軽量。フードを解除するだけでダンパーの力だけで開くほどです。

運転席のすぐ背後に搭載された3.5Lのドライサンプエンジン。ボディはモノコックにパイプフレームをくっつけたセミモノコックです。

この時代になるとV8エンジンもヘッドが赤くなります。これを見ても”テスタロッサ”の特権はV12だけのものではなくなったことが伺えます。

ホイールは18インチが標準採用されています。

スクーデリアの黄色が赤いボディを背景に輝いています。

フェラーリF355の内装

全てブラックにまとめられたインテリアは包み込むようなデザイン。分厚いサイドシルを跨ぐので全幅1900mmのクルマとしてはタイトな室内空間です。

ここからみても分かるほどペダル配置は右寄りです。太いタイヤハウスがあるのでそれを避けるように先が窄まっています。中期以降はエアバッグが付いていますのでそれによる多少の内装の変更があります。

シートはホールド感のあるセミバケットシート。室内は広くないものの、リア含め窓の面積が大きいので車内は明るいです。ヘッドレストにエンボスされた跳ね馬がテンションを上げてくれます。

F355は6速マニュアルで、バックは左下、垂直に押し込むようにしてねじ込みます。エアコンのボタンなどがここに集約されています。

試乗インプレッション

F355の乗り味は”意外性の連続”でした。まずクラッチの操作は非常に簡単で素直です。発進やシフト操作に癖は全くありません。速度と回転が上がるごとに金属音を響かせながらシフトノブでゲートをなぞるのは快感です。

ただ、アクセルだけは注意が必要で0から少しだけ踏むにはやや硬く、綺麗に速度を維持するのは難しい。ですが、そんなことは気にしても意味がありません。踏めば良いのです。スムーズに回るので気持ちよく乗っていると常時4000rpmを超えていることも気付けません。

高速道路に乗ると、下道での疑いが確信に変わります。「ボディが緩い」のです。フェラーリといえば泣く子も黙るスーパーカー、スポーツカーです。しかし乗ってみるとコーナーでは少し揺れながらラインをトレースし、ストレートでも修正舵が必要なくらい儚い操作感です。最高出力も8000rpmオーバーでの数値ですから、日常領域では250馬力くらいに感じますし、トルクも決して太くはない。

だがそんな些細なこと、自動車ジャーナリストが顔をしかめそうなことは、音と触る部分の気持ち良さで総裁どころかお釣りが来ます。ポルシェが合法で楽しめないのに対し、フェラーリは合法でその魅力をほとんど味わうことが出来ます。なぜこんなにも魅力的なのか、なぜこんなにも楽しいのか、なぜこんなにも欲しいのか、新たな疑問が次々と湧いてくる不思議なクルマでした。いやこれはクルマではなくフェラーリという物体なのか。

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