試乗記

アルピナB3ビターボツーリング試乗インプレッション|”確かに出せる”300km/hセダンは伊達じゃない

速いワゴンというカテゴリー

アルピナのクルマ作りは非常に個性的で、速さとラグジュアリー性を共存させた唯一無二の存在になっています。

よく比較されるM社のようにサーキットや限界走行中の性能向上ではなく、直進安定性に重きを置いたチューニングになっています。そして、そのボディスタイルはセダンやワゴンをメインにしているというのも面白いところです。

今回はそのアルピナを象徴するかのようなB3ビターボツーリングを試乗インプレッションしていきます。

アルピナB3ビターボツーリングのデザイン

サイドフォルムは普通の3シリーズツーリングと同じではありますが、印象的な20本スポークホイールと控えめに主張するデコラインがアルピナの証。

この20インチホイールはアルピナの伝統で、ハブボルト1本に対して4本ずつの中空スポークという具合になっています。昔からこの異常な扁平タイヤにこだわりを持つアルピナですが3シリーズともなると20インチでタイヤハウスギリギリ。

その中に収まるブレーキはアルピナのイメージにもあるブルーの対抗ピストン。メタルのセンターキャップを外すと、空気を入れるためのバルブが出現します。タイヤがミシュランなのもアルピナは昔から同じで、これは最も真円に近いという理由から。

バルブはホイールの中心にある方が、バランスが良くなるのでしょう。

インテリアはおそらく標準仕様で選択できるダコタレザーにウッド。オレンジっぽいブラウンと黒のツートーンです。

ちなみにF30型のB3ビターボはリムジン=セダンが左ハンドル、ツーリングが右ハンドルが標準設定されています。リムジンで右ハンドルにするには30万円のオプション料金が発生します。ですが市場を見ると右ハンドルが多い。これはE46の時代から同じ傾向で、アルピニストのゆとりを感じることができます。

シートにはアルピナのバッジ。レザーも数種類選択できます。

あくまでベースは3シリーズツーリングですから、窓だけで開く機構も継承。

オプションのサンルーフは後席の上まで続く巨大なもので、チルトも可能。

トランクスペースも十分。トノカバーがありますので、先ほどのように窓部分だけ開けてギリギリまで荷物を入れることができます。

アルピナであることを証明するバッジです。

試乗インプレッション

運転席に座ると青いメーターが飛び込んできます。なんと330km/hまで刻むブルーのメーターですが、最高巡航速度が300km/hを超えるので”必要だから”このメーターになっているわけです。

しかもリミッターは設定されておらず、免許と命を差し出すことでワゴンでありながら300km/hの世界に到達することが可能。ノーマルより少し太いステアリングには緑と青のステッチ。ステアリングの裏にはシフトボタンが隠されています。左がマイナス、右がプラスというスタイルはE36やE46から続く、これまた伝統とも言えると思います。当時としてはハンドルにシフトスイッチをつけるというのは珍しかったのですがようやく時代が追いついてきましたね。

下道でアルピナのパワーを感じることはほとんどありませんが、回転数をほとんど上げることなくシフトアップしていくのはトルクがある証明です。アクラポビッチのマフラーは左右4本出しですが音も控えめ。もちろんこれは軽量化と排気効率のためです。そう、アルピナのパーツには全て理由があるのです。

しかし高速道路に乗って最初の合流で少し踏み込んでみると、実に効率的にパワーをスピードに変換しながら加速していきます。一回踏んですぐに「確かに」とこぼれてしまいます。確かにこれは300km/h出る。そして特に面白いのが、スピードを上げても操作感がほとんど変わらないことです。高速域でもステアリング操作通りに曲がりますし、ブレーキもしっかり効きます。

エンジンを強化すればスペックシート上は300km/h出るクルマは今となっては珍しくありませんが、アルピナB3ビターボは誰でもとは言いませんが比較的多くの人が実際にそのスピードにトライ出来る安心感があります。

一般道では20インチ、扁平率30ということが信じられない乗り心地の良さでしたが、高速にいくとその本領を発揮するように思います。踏めば踏むほど安定するのはリアのキャンバーが理由でしょうか。中央道のようにアップダウンとカーブが多い高速道路では間違いなく無双状態になるでしょう。別荘族にぜひおすすめしたい一台です。

 

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