試乗記

アルファロメオ164QV試乗インプレッション|本物のブッソ、単カムという性癖

シングルカムという宗教

アルファロメオのエンジンというと、105系に代表されるツインカム4気筒ユニットとGTAなどに代表される90°バンクのV6エンジンが思い浮かぶと思います。その両方とも既に過去の産物になってしまっていますが、今でも街中で見かけることが多いです。

今回特集するアルファロメオ164QVは最後のシングルカムブッソV6を搭載したモデル。同じ164でも後期になるとDOHCになるのでQVはカテゴリーとしてはGTV6やSZ/RZなどと同一に括られても良いでしょう。

アルファロメオ164QVの外装

特徴的な2トーンカラーを纏ったロッソアルファです。当時空力を最適化することをデザインの課題としていたのもあり、角張ったセダンが多かったです。実際アルファ164はCd値0.30と非常に優秀です。

ノーマルのホイールはスピードライン製15インチですが、この車両は16インチのアッソパルティーレに換装し、よりエンリコ・フミア氏のデザイン画に近い姿を再現しています。

テールライトは横一文字に繋がってます。当時のアルファではスパイダー、75でも繋がったテールライトを採用していました。ただ他のモデルと異なって164のテールライトはサイドのプレスラインからそのまま繋がっているので非常に理解しやすいデザイン。

そのサイドのプレスラインは非常に特徴的です。まるで切り立った崖のようになっていて、影を落としスリムかつマッシブなボディラインを生み出しています。同じエンリコ・フミア氏がデザインした916GTVとはまた違った迫力があります。

リアのバッジは回転させると鍵穴が出現します。昨日部品を外観に極力出したくないというデザイナーの意志が感じられますね。

サイドマーカーの横にピニンファリーナのバッジ。この車はピニンファリーナの主張はそこまで顕著ではありません。

前期はボンネットから下のグレーのところまで達する大きいヘッドライト。後期になると少し薄いデザインになります。このマイナーチェンジは同じティーポ4のランチアテーマでも似たような変更が施されました。

アルファロメオ164QVの内装

164QVの内装色はおそらく黒だけです。Q4になるとタンレザーなども選択できるようになりました。

内装もQVは特別で、ドア内張、ダッシュボードのメーター周りやシフト周辺に赤ステッチがあしらわれています。

シートも専用でサイドスポートが大きく迫り出したスポーツシートになっています。

リアシートもサイドサポートがあるスタイルで当時のAMGや500Eのシートと似たスタイルです。

アルファ164の内装で絶対に無視できないのがこのパネル。何を食べて育ったらこれを思いつくのか私には皆目検討がつきません。分かりやすさは微塵もなく全てのボタンが同じデザイン。しかもその中にハザードや給油口、トランクオープナーも含まれています。確かにデザインは見事なのですが、勘弁してくれとため息が出ます。

ステアリングは3本スポークです。メーターはスピードメーターとタコメーターが左右に大きく配置され、その下にガソリン計や水温計などが並んでいます。

ペダルはほとんど同じ高さに揃っていて、アクセルとブレーキがやや近いです。シフトノブはストロークこそ短めですがシフトノブが長いので普通の操作感。

試乗インプレッション

エンジンをかけると独特な振動と少しだけタペット音が聞こえます。アクセルに足を触れた瞬間、回転数は一気に1000rpm上昇。そう、このレスポンスの良さこそSOHC、シングルカムブッソの真髄です。DOHCに比べて単純にパーツ点数が少ないので軽く抵抗なく回ります。

走り出すと、アクセルの軽さとそれに対する反応の良さ、ステアリングのクイックさがすぐに体感出来ます。特にステアリングはスポーツカーとしてはかなり軽く、手の重さがかかっただけで操舵してしまうほど敏感。ブッソV6のハイエンドモデルといえば156GTAや147GTAが思い浮かびますがあれらのステアリングもクイックでしたね。なるほどその源流はここにあるのかと。

さらに共通する部分としてはシートです。デザイン的にはホールド感がありそうな164QVのシートですが、実際は柔らかくて全然固定してくれません。これもGTAに残念ながら継承されている点です。

ハイチューンとはいえ200馬力いうことで、当時のライバルと比べても特段パワーで優っているわけではない。なんなら535iですら200馬力以上ありますし、W124の300Eでも225馬力あります。ただ、トルクはほとんど同じくらいあるので164QVが遅いと感じることはまずないでしょう。さらに、それらドイツ勢の6気筒モデルと比べると100kg以上軽いので街中での中低速の俊敏さはとても気持ちが良いです。

高速に出てもなお軽さのアドバンテージは感じられ、スイスイとスラローム出来ます。

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