世界一美しいクーペ
BMWはどの車にも走る楽しさを与えた”駆け抜ける喜び”がメーカーとしてのコンセプトになっています。
それゆえにFRレイアウトへのこだわり前後重量配分50:50に近づける施策が講じられてきました。今回はそんなBMWの中でも特にアイコニックな存在であるE24型635CSiを試乗インプレッションしていきます。
BMW635CSiのデザイン
丸目四灯、キドニーグリル、逆スラントノーズ、これはBMWの3点セットです。そしてそれをサイズの制限なしに最もかっこよくまとめているのがこのE24 635CSiだと思います。
ボディサイドにはピンストライプが施され、全体に締まった印象を与えます。日本に輸入されたこの6シリーズはバンパーが小さい633、その後に登場したビッグバンパーが635ということになります。迫力満点のビッグバンパーですが、ボディサイズは全幅1740mmと現代の基準で言えば小さいです。
ベルトーネが担当したデザインは、4815mmという贅沢なサイズ感だからこそ635CSiを世界一美しいクーペと言わしめる所以でしょう。ビッグバンパーになるとフェンダーが少し盛り上がってリアからの迫力も中々のものになります。
このボディサイズから、ライバルはジャガーXJ-Sでしょう。決して早く走るための3.5Lではなく、”優雅に流すため”の3.5Lなのだと思います。
BMW635CSiの内装
シートはサイドサポートがしっかりあるレザー。この時代としては先進的な電動パワーシートです。調整幅もかなりのものでフラッグシップクーペらしい装備と言えます。
シートの調整ボタンはサイドブレーキの横にあります。ノールックで操作するのは困難でしょう。
トランスミッションはZF製4ATでE30の3シリーズに使用されるものと同じです。シフトゲージの横のダイヤルはモード切り替えです。
ダッシュボードは運転手を向いた作りになっています。
後部座席は173cmの私が普通に座れるくらいの広さがあります。やや髪の毛が天井に擦るくらい。
試乗インプレッション
エンジン音はそこまでうるさくなくて、直6らしい振動の少ないアイドリングを見せます。回転数も低くて車内は静か。走り出してみるとスムーズで2000rpm以下でゆっくり回転数を上げながらシフトアップしていきます。
私が乗っている928も4ATですがそのエンジンの使い方には明確な違いがあって、635CSiはとにかく低い回転数で100km/hにストレスなく加速します。最高速度を260km/h以上に設定している928ほどの荒々しさは皆無です。良く言えばおとなしくて優雅、語弊を恐れずに言えば少々退屈です。
しかしこの乗り味は私が普段足にしているジャガーXK8に近いものを感じます。もちろんテクノロジー的には一世代ほどの違いがありますが思想は似たものです。目をバキバキにしてハンドルにしがみつくのではなく、片手でハンドルを持ち片手でタバコを持ちながら乗るスタイルが似合います。
それでも基本的な運動性能はこの年代の車としては高いですから、現代の基準で乗っても不足はありません。