試乗記

アウディTT(8N)3.2クアトロ試乗インプレッション|大人なTTが最適解か!

ゴルフR32の心臓

アウディTT8N型にはマニュアル、トルコンオートマ、DCTの3種類のトランスミッションがあり、エンジンも大まかに言えば3種類あります。

中でも結果的に歴代TTの中で最大排気量となったTT3.2クアトロは、プラットフォームを同じくするゴルフ(4)R32と同じエンジンを搭載します。横置きの3.2L,V6自然吸気エンジンは、歴代TTで唯一のNAモデルでもあります。

今回は私の知り合いの方にお借りしたTT(8N)3.2クアトロを試乗インプレッションしていきます。

TT(8N)3.2クアトロのデザイン

サイドビューは3.2で純正採用された18インチホイールが目立ちます。一応、TT3.2クアトロはSラインなので、ドアの後ろにSラインバッジが貼られています。

車高は標準より低いです。

タイヤサイズは225/40/R18のナンカンAR-1が入っています。ほぼSタイヤといった感じで、肩が張った角張ったタイヤでした。

TT3.2クアトロは先に述べた通りSラインなのでウィングは大きくなっています。といっても普通のウィングに黒いパーツをはめ込んだような簡素な大型リアスポイラー。

ライト内部はボディ色になっていてより現代的な印象を与えます。グリルも初期の横基調から縦基調に。

左右2本出しマフラーはクアトロ全車種共通で、ディフューザーが黒いのがSラインの印。

試乗インプレッション

一般道

DCTはギアを変えてもさほど衝撃はなく、ブレーキを離して初めてその独特なクリープを披露します。

様々なDCTがありますが、TT3.2クアトロはかなり初期のDCTですから数m進んだだけでその”未完成感”が現れます。ポルシェのPDKはエンジンのパワーが一定にミッションに伝わってきますが、TTのDCTはぐわんぐわんと波があります。

軽めのアクセルを少し強めに踏むとようやくスムーズに加速を始めます。一般道でよく使う速度域では1500rpmから2000rpmでバシバシシフトチェンジしていきます。シフトショックは少なく一定に、そしてスムーズに加速する組み合わせです。

ハンドル裏にあるパドルシフトを操作してシフトダウンするとエンジンがやや高音で細かなサウンドを奏でながら「いつでも踏め」と備えます。2速の開度60%ほどで加速は鋭くなりさほどリフトすることなくあっという間に60km/h。初速以外はスムーズでストレスの無い加速でありながら、1.8クアトロのような”速っぽい”クルマではないなと断定したいです。

ハンドリング

タイヤの癖がすごいので切り始めは肩の剛性感しか感じませんが、ターボを搭載しているとはいえ軽いはずの1.8Lとそこまで顕著な違いは感じられません。コーナーでアクセルを踏みながらハンドルを切ると確かに多少重く感じますが、それはエンジンの重さだけでなく足回りのセッティングやトルクの出方の違いによるところも総合して起こる違いだと思います。

TT3.2クアトロはハンドリングマシンではなく、普通のクルマに若干速いエンジンを搭載した高速巡航マシンという仕上がりでした。スポーティカーであり、スポーツカーではない。同じクアトロモデルでは前期の1.8Tがチューニングカー、後期の1.8Tがスポーツカー、3.2がスポーティカーという印象でした。性能の方向性が違うので、全て違うクルマといっても過言ではありません。

エンジン

横置きの3.2L,VR6エンジンは250馬力/6300rpm、最大トルクは32.7kgf・mを3000rpm付近で発生させます。

このエンジン、V6と表現しても間違いでは無いのですが、バンク角が15°と非常に小さいため狭角V6とも呼ばれます。点火タイミングが直6と同じで振動を打ち消し合うためスムーズなだけでなく、物理的に小さいスペースで作れるのでTTやゴルフといったコンパクトカーに搭載が可能となりました。エンジンブロックが同じカイエンやトゥアレグはこれを縦置きにした4WDです。横置き、縦置き両方で4WDというのはかなりレアでは無いかと思います。

快適装備と居住性

基本は他のTTと同じです。TT3.2クアトロはほとんどこのフルレザーシートです。シートヒーターも装備。

それ以外はこちらの記事に準ずるものとします。

総評

TT3.2クアトロはジェントルな仕上がりだと思いました。馬力で言えばTT8N最大ですが、ジャジャ馬ではなく落ち着いています。踏めば速いし、踏まなければ振動が少なく静かです。

右ハンドルですし1台で済ますならこの選択肢はかなり魅力的だと私は思いました。市場を見てみると、古くて排気量が大きく税金が高いからか、1.8Lとそこまで価格差がないのでコスパも抜群。

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