50万円で買えるコンセプトカー
初代アウディTTはコンセプトカーをそのまま発売したような斬新なデザインが人気のパーソナルカーです。
発売から20年経過した今となっては、50万円程度で購入できるお手頃価格。しかもエンジンやトランスミッションもラインナップが様々なので、自分に合ったTTを選ぶことが出来ると思います。
今回は私が所有して足として使っているアウディTT(8N)1.8Tクワトロを試乗インプレッションしていきます。このサイト2記事目でいきなり21世紀のクルマですが、同じデザインで20世紀には売っていたので特例です。
アウディTT8Nのデザイン
TTの魅力はなんと言ってもデザインだと思います。このデザインに惹かれて購入する人、アウディは別に好きではないけどTTが好きな人は多く見かけます。
基本的に丸っこいデザインですが、ライト形状は真四角。この四角いライトがボディの丸さをより強調する役割を担っているのかもしれません。私のTTはSラインバンパーを入れていますが、本来はグリルが横基調で開口も小さいです。
サイドビューは滑らかで、ほぼ左右対称なウィンドウの取り回しが素敵です。着座位置は車体中央あたりで、FFベースの4シーターとしては一般的なレイアウト。プラットフォームをアウディA3やゴルフ4と共有するため、ボディサイズは小さいです。
リアビューはプリッとしたお尻が可愛いです。フロントライトとテールライトは外側に向かって垂れ目になっているのでボディの丸さを感じます。私のTTは1.8Tクアトロなので2本出しマフラーですが、後に登場するFFのTT1.8Tは左側1本出しマフラーです。3.2クアトロも左右出しです。
このTT8N型のデザインは内外装共に統一感があって良いです。給油口はこのボルト留めスタイルですが、実際半分はダミーです。内装にもこのパターンが見られるので、同世代の他のアウディとも違った魅力を醸し出します。
初代TTだけはリアのピラー部分が後方に向かって絞るようなスタイル。これが8J型や8S型では直線的になってしまうので単調に感じます。
TT1.8Tクアトロはこの6本スポークホイールで、バンパーもこれが標準です。
タイヤサイズは225/45/R17、4本とも同じです。このサイズは選べるタイヤも非常に多いため、タイヤ代もとても安く済みます。私はミシュランパイロットスポーツ4を入れていますが、新品4本で6万円ほどでした。
試乗インプレッション
一般道(前期APXエンジン)
ボディサイズの割に長いドアを開けると、シートは開口部のやや前寄りに位置しています。大きめのランバーサポートにすっぽり収まると、足はやや下がった位置になります。ダッシュボードが胸の前あたりにあるので若干の圧迫感を覚えます。
左にタコメーター、右にスピードメーターです。中央には水温計と燃料計。どのメーターの針も付け根が給油口と同じパターンで、エアコンの吹き出し口やハンドルセンターにも同じモチーフが施されています。
軽めのクラッチを踏んで2速にギアを入れ、右手のハンドブレーキを下ろしてクラッチを少しずつ引いていくと半分くらいのところでタコメーターの針が少し下がり駆動力が伝わります。1.8Lではありますが、大きいターボで過給したエンジンは2速でもスムーズに発進します。
アクセルペダルは一般道の2000rpm程度では機敏に反応しませんので、良くも悪くもダルく走れる感じです。ブレーキペダルは1cmほどの遊びがあって、効き始めると少し硬めの踏み心地です。
シフトは癖がなくサクサク入るので気持ち良いです。下道では基本2速発進で、2000rpmでシフトチェンジをすると6速に入れるのが大体60km/hくらい出ている時です。
一般道(後期BAMエンジン)
まずクラッチの踏み心地(少し手が加えられているのもあります)も、ミートのポイントも違うことに驚きます。年式なりに走行していますが、私の車両よりも1万キロほど多く走っているくらい。シフトの感触を確かめるとショートストロークキットが入っていてかカチャンカチャン入っていきます。ノーマルはスコスコ、ゴリゴリ入り、これはこれで気持ちが良いのですがショートストロークは癖になります。
後期型はバッジがない
クラッチを踏んで2速に入れてミートしてみるとここで違和感が生じます。前期のTTではクラッチミートする場所は比較的広くて特に手前側で繋げやすいのですが、後期のクアトロは明確な1cmくらいにミートポイントがある感じ。
そこで合わせてブレーキを離すと、ガクガクしながら発進。これもまた変だ。前期では2速が最もスムーズに加速しますが、後期の2速では確実に間違ったシフトであるとクルマが言っているような気がしました。何度か2速発進を試みたものの、ほんの少しの上り坂でエンストしかけたので1速発進に変更。
おそらくオプションのフルレザーシート
1速で少し踏んでみても前期のようなガツンとした加速はなく穏やかです。決して遅くはありませんし、速いクルマであることに変わりはありませんが、前期とは全く違います。特に2000rpmを超えた時に指数関数的に加速する前期に対して、後期の加速は一次関数的。タービンの過吸音もそれに付随しています。
2500rpmほどでアクセルを離すと「シュー」とタービンの圧が抜ける音がします。前期は「シュシュシュシュシュー」とまるで改造車のようなサウンドですが、後期はあくまで最低限の働きぶり。エンジン本体のシリンダーの振動に変わりは感じないので、タービンのセッティングやスロットルが違うようなそんな感覚でした。
とにかく何もかも違うという衝撃です。
足回りやブレーキはノーマルではないので比較はできませんが、エンジンの回り方だけでこれだけ違うのは面白いです。
高速道路(前期APXエンジン)
225馬力のTT1.8Tクアトロは高速道路でも十分速い部類に入ると思います。6速で100km/hの時に2500rpm前後。この回転数はトルクが最も出る領域なのでピックアップが良く自在に追い越しできます。
ただ出力は癖があって、ブーストがかかるのにかなりのラグを感じます。かかり始めると一気にパワーが出るのでドッカンターボなクルマだと思います。4WDなので変に暴れることもありませんが。強く加速するとフロントがリフトする感覚があります。
高速道路では段差などでリアが若干跳ねるような暴れ方をするものの、突き上げるような不快なものではありません。高速移動が快適というほどでもありませんが可もなく不可もなく。ロードノイズは120km/hを超えるとうるさいのでそれ以上出す気を失くします。
ハンドリング
ハンドルはシンプルな3本スポークで、1.8Tクアトロは中央のスポークの下の所にバッジがあります。私のTTはスウェードで巻き直ししています。シワが寄っています。次こそは失敗しないと思います。
フロントヘビーなクルマなのでハンドルの重さは少し重め。遊びは少ないのでキビキビ走ってくれて楽しいです。クアトロなので雪道1速でトラクションコントロールOFFにしていてもハンドル操作に対して曲がってくれる優れもの。スタッドレスを履いていれば圧雪では普通の路面となんら変わらず曲がります。
エンジン
エンジンは225馬力の1.8Lシングルターボ。5バルブの直4を横置きにしたFFベースの4WDです。
搭載位置は車軸から完全に前側にはみ出ていて、室内空間の確保(実際は大したことない)を念頭に置いたハッチバックのプラットフォームの面影を感じます。ただ、昔の縦置きエンジンであってもアウディはオーバーハングにエンジンを載せているので必ずしもプラットフォームのせいでもないとは思います。
快適装備と居住性
エアコン、シートヒーターが装備されています。エアコンの吹き出し口は私のお気に入りポイント。この銀色の円のパーツを回すと吹き出し口ごとに風量を調整出来ます。スマホホルダーをここにつけても、スマホに風が当たらないように出来ます。
吹き出し口の下の両端がシートヒーター。一度ボタンを押すと出てきます。ダイヤルになっていて6段階に調整可能ですが、3で火傷しそうなくらい熱いので5や6は使った試しがありません。このボタン全てが同じモチーフなのがとても良いです。
リアシートに人権はなく、荷物置きと化しています。150cm以下なら首を曲げずに座れますが頭上がガラスという絶対に間違った着座位置になっています。
フロントシートはちゃんとしていますし、居住性もあるのであくまで2人乗りのパーソナルカーという印象が強いです。サイドシルにはTTのロゴ、窓のスイッチはドア内張の取手の付け根に隠されています。吹き出し口もそうでしたが、TTのデザインは”機能を隠す美学”のようなものが感じられます。
積載能力
デザイン重視なクルマでありながら、積載能力は素晴らしいです。4mほどの短いボディですが、シートを倒すとゴルフバッグもスノーボードも縦に積めます。同じTT8N型でも、FFモデルはリアに駆動パーツがない分フロアが低くなっています。そちらだと折り畳み自転車が積めたりしますが、四駆モデルは四駆モデルでシートを倒すとフラットになるというメリットもあります。
この部分は日焼けしている個体が多いですが、私は染めQで塗っていますので真っ黒です。フロアマットは、スウェード生地を張っています。
総評
初代アウディTTはお手頃価格で手に入れられるクルマです。スポーツカーかと言われると、若干疑問符が浮かびますがシフトをガチャガチャ弄りながら運転するのは楽しいです。クラッチも重くないし、ボディサイズも小さいので足としても使えます。
旧車に乗っている人でこのTT8N型を足に使っている人は結構多いので、やはり時代を超えた名車だと思います。所有して2年半で大した故障はありませんが、故障の話は「整備録」で書いていこうと思います。
私のもう一台の愛車ポルシェ928S4の試乗インプレッションはこちら。